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INTERVIEW

オーナーチェンジを果たした渋谷のブックカフェ「BOOK LAB TOKYO」 が目指す【本3.0】とは

渋谷の道玄坂に2016年にオープンしたブックカフェ「BOOK LAB TOKYO」。

BOOK LAB TOKYOは、書店でありながら最大80名規模のイベントも可能で、さらに電源・USBコンセント、FREE Wi-Fiを完備しているため、渋谷界隈で働く人たちのサードプレイスになっている。コーヒースタンドでは朝昼はコーヒーを、夜はクラフトビール・ワインも提供している。

そんなBOOK LAB TOKYO が2017年8月1日から新体制となり、注目を集めている。新たにCEOに就任したのが、株式会社HARES CEO、複業研究家であり、ランサーズの複業社員でもある西村 創一朗氏だ。

書店経営は初めて、という西村氏に、就任の経緯や新たな試み、これからの目指す姿を伺った。

「6枚目の名刺を持ちませんか?」書店・飲食店経営未経験のCEO誕生

− まず、新体制発足の経緯を教えていただけますか

BOOK LAB TOKYOは、2016年6月にLabit Inc.のオウンドメディア的な位置づけの事業として始まりました。この場所を起点に自社のブランディング、集客、エンジニアの採用に繋げることを目的にしていたので、採算が合わなくても存続させる必要があったんです。

しかし会社の事情で、BOOK LAB TOKYOを切り離さなくてはいけなくなりました。そのためLabit Inc.CEOであり、BOOK LAB TOKYOのオーナーであった鶴田くんは、独立採算化して分社化に向けた準備を進めていくか、潰すかの2択を迫られることになりました。

“クラウドファウンディングで多くの人に支援してもらいオープンしたこのお店を潰すわけにはいかない”と、黒字転換できる人にBOOK LAB TOKYOを託そうと決めたとき、鶴田くんの脳内検索でヒットしたのが僕だったそうです。

ちょうどその頃、僕がランサーズ株式会社で複業社員として働き始め、5枚目の名刺を持ったことをSNSで報告した投稿を鶴田くんが見て、「6枚目の名刺を持ちませんか?」と電話をかけてきてくれました。それがきっかけとなり、今に至ります。

新たな書店づくりに欠かせない、【本3.0】とは

— 西村さんが考える【本3.0】について伺えますか

電子書籍やスマホの誕生により、本にも新たな位置づけが求められているように思います。紙だけしかなかった時代が【本1.0】、紙と電子が分離していた時代が【本2.0】、そしてこれからの時代は、紙と電子、そしてウェブとリアルな体験を融合した【本3.0】の時代が到来すると考えています。そして、本3.0のキーワードになるのがコミュニティです。

今の時代、本を買うだけならAmazonでいい。ではなぜ、未だに人は本屋で本を買うのか、潰れている本屋は増えてはきているものの、なくならないのか…。それを考えたときに出た答えとして、Amazonは基本「指名買い」で利用することが多く、セレンディピティ(素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること)は起こりづらいということ。Amazon内にもリコメンド機能はありますが、それで本を買うことはあまりありません。

じゃあどういう時にどんなきっかけで人は本を買うのか。それを考えるのが重要で、僕の場合もそうですが例えば「自分が尊敬する人がFacebookで薦めていた」とか、「友人と会って最近買った本の話を聞いて面白そうだった」とか、人との繋がりによって本との出会いが生まれていることに気付いたんです。

ただ既存の書店は、人との繋がりをつくるコミュニティができているかというと、残念ながらそうではありません。特に大手の書店であればあるほど、「本と私」の出会いである「I&YOU」についてはディスプレイやフェア等、素晴らしい取り組みをされていると思いますが、「本と私」の間にあるコミュニティについては無頓着であると思うんです。イベントスペースを活用し出版イベントも行っていますが、それはあくまでも著者とオーディエンスとの関係であり、そこで何かエンゲージメントを高くするような参加者同士の横の繋がりを演出できているかというと、そのような設計にはなっていないと思います。

「人との繋がりを生むコミュニティを本屋でつくることができれば、新しい読書体験を作れるのではないか」という仮説を立て、新体制を始めました。下北沢の「本屋B&B」や、池袋の「天狼院書店」のように、BOOK LAB TOKYOでもその仮説を体現していきたいです。

 

− BOOK LAB OWNERS CLUB(BLOC)設立は、そういったコミュニティ作りのひとつの施策なのでしょうか?

そうですね、オンラインサロンと書店を組み合わせた感じです。月額15,000円(先着100名限定で1万円で提供)でマイクロオーナーとしてBOOK LAB TOKYOにてカフェとソフトドリンクが飲み放題、ワークスペースや書斎スペースが利用無料、イベントスペースを優待価格にてレンタル、BLOC限定のオンラインコミュニティへの参加等の特典が受けられます。

 

BOOK LAB TOKYOが目指すコミュニティのカタチとは

− 最近は様々なコミュニティやオンラインサロンも注目を集めていますが、西村さんが思う、“良いコミュニティ”とはどんなものですか?

良い・悪いというより、合う・合わないという表現が正しいかもしれませんが、BOOK LAB TOKYOで展開するコミュニティは、トップダウンのヒエラルキー型ではなく、ホラクラシー型のコミュニティを目指しています。

上下がなく、オーナーはあくまでもハブ役。コミュニティメンバー同士でいつの間にか繋がりが生まれているようなコミュニティが理想です。

 

− 具体的に、BOOK LAB TOKYOにおいてオンライン・オフラインのコミュニティでどんな取り組みをしていくのでしょうか?

もともとBOOK LAB TOKYOは、「作る人を応援する書店」というコンセプトで作られました。その想いに立ち返り、徹底的に磨いていきたいと思っています。それを実現するため、先ほど紹介したBLOCに加え、BOOK LAB AUTHORS CLUB (BLAC)も新設する予定です。書店、著者、読者が三位一体となる新しい読書体験をオンラインサロン型でつくっていきます。

また、オフラインで定期的に集まる機会も設けます。毎日初来店のお客様ばかりというよりは、1日のお客様の半分以上がリピーターという方が、顧客とのエンゲージメントが高いお店だと思いますし、理想です。そういったコーヒー1杯いくら、ではなく、月額制で何杯でも飲み放題です、いつでも来てくださいねというビジネスのあり方にしたいと思い、BLOCやBLACのカタチに辿りつきました。

さらに「会員」という言葉は使わず、「マイクロオーナー」という呼び方にしているのもこだわりの1つです。競馬でいうと一口馬主のようなイメージ(笑)名前の通り、オーナーの1人としてお店づくりに積極的に関わってほしいと思っています。書棚のうちひとつをBLOC専用にする予定です。テーマに沿った推薦書をマイクロオーナーから募って、その意見をそのまま店頭のPOPに書いて展示するコーナーであったり、個性豊かなマイクロオーナーのキャリアを活かした推薦書コーナーなどを作ろうと考えています。

イベント会場としての活用を強化するため、営業時間の見直しも

− イベントにも力を入れて、朝7時〜と19時〜の1日2回、毎日イベントを開催していくとのことですが、狙いを伺えますか

世の中にある多くのコミュニティにBOOK LAB TOKYOのスペースを活用してもらいたいと思った時に、特に東京は時差BIZが話題になっているので、朝のコミュニティをハックしたい、朝活の拠点として使ってほしいと思ったんです。しかし従来の朝8時オープンでは、既に会社に向かう時間の方も多く、難しい。そこで、一旦夏期限定で9月末までは、これまでの8時〜23時の営業時間を、7時〜19時に変更しました。19時閉店にしたことは、その後の時間をイベント開催で埋めるという、自分たちへプレッシャーを与えるためでもあります。実際、連日連夜いろんなイベントの予約が入ってきています。

 

− 駅近という立地を活かし、渋谷にいる多くの人々に来店してもらうための工夫はされていますか

いえ、ぶらり来店は狙っていないんです。一応、目印になるような大きな看板はビルに設置していますが、路面店ではないので、漠然とカフェに行きたい人に見つけてもらえることは少ないんです。だからこそ、オンラインや人づてでこのお店のことを知ってもらい、BOOK LAB TOKYO「ご指名来店」を増やすことが重要だと考えています。

紙の本の可能性

− 電子書籍も溢れている時代に、西村さんの考える「紙の本」の可能性について伺えますか

音楽業界でも、CDの売上は下がっていますが、フェスやライブの参加者は減らないし、むしろ新しいフェスやライブがどんどん作られ、盛り上がりをみせています。みんなリアルを求めているんですよね。リアルとは、アーティストの音を生で聴ける体験と、一緒に楽しむ仲間との絆。それは音楽だけでなく、映像や本などすべてのコンテンツに言えることだと思います。

書籍で言えば、リアルな場として本屋が必要だと思います。一方で、本だけでなく読書という体験も同じ。電子書籍が紙の本を完全に淘汰するか?というとそんなことはないと考えています。電子書籍と紙の本を読むのでは、ユーザー体験が全く異なります。書籍の市場規模自体は下がると思いますが、書き手や読み手の視点を考えた時、紙の本という媒体があることがより強固なエンゲージつくると思うし、紙の本を出版した実績は、書き手のマイルストーンになると思うんです。だからこそ、自費出版のビジネスが成り立つわけで、書き手のニーズも、その書き手をリスペクトする読者のニーズも、これからますます高まるのではないでしょうか。好きなアーティストのCDを買うことがファンのエンゲージメントを高めるように、紙の本を買う、持っているということがエンゲージメントを高めるので、より紙の本の重要性は高まると思います。

 

− ありがとうございます。最後に、記事を読んでいる方に一言いただけますか

BOOK LAB TOKYO のモデルがうまくいけば、BOOK LAB OSAKA、KYOTO、FUKUOKA、SENDAI、HOKKAIDOなど、各地に横展開していきたいと思っています。BOOK LAB AMERICAがあってもいいと思いますしね(笑)

世界中にシェアオフィスを展開するWe Workならぬ、We Readを目指し、世界中にネットワークを張るような本を中心としたコミュニティに成長させたいと思っています。

ぜひ東京にお越しの際は、「BOOK LAB TOKYO」に新しい読書体験をしに遊びに来てください。

BOOK LAB TOKYOでは、お客様同士の「久しぶり」「元気してた?」の声が絶えず聞こえてくる。普通の書店ではありえない光景だが、まさに新しい書店のカタチが動き始めている証だ。

BOOK LAB TOKYOのような横の繋がりを生む書店が、今後どのような化学反応を起こしていくのか、目が離せない。

 


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